タイポグラフィに正解はない。あるのは読者の状態だけ。
行間や太字の正解ではなく、「読者の認知」を設計するという考え方
こんにちは、ムラサメです。
タイポグラフィって聞いたことありますよね?
タイポグラフィ
文字や文章を読みやすく、美しく配置・デザインし、情報の「可読性(読みやすさ)」と「視認性(見つけやすさ)」を最大化すること
ここでタイポグラフィについて細かく書きだすと長くなるため、今回はSNSやBlog記事での扱いを元に説明していきます。
行間を広げれば広げるほど、記事が読まれなくなることがあります。
これは実際に起きること。
「読みやすく書きましょう」という常識を真面目に守るほど、読まれなくなります。
なぜそんなことが起きるのでしょうか?
答えは1つ、タイポグラフィは「読みやすくする技術」ではないから。
タイポグラフィは、読者を次の認知状態へ導く技術です。
「読みやすさ」は、途中の話
記事を書くとき、多くの人は「どうすれば読みやすくなるか?」を考えます。
ですが、読者の認知はその前から始まっています。
【読む前】
まず視界に入る
↓
少し気になる
↓
読む気になる
↓
【読んだ後】
内容を理解する
↓
記憶する
↓
行動する
大体この順番になります。
可読性が力を発揮するのは、「読む気になった後」の話です。
読む前の人に、どれだけ読みやすい文章を用意しても届きません。
まず必要なのは「続きを読もう」と思わせること。
可読性の出番は、その後です。
タイポグラフィには、役割が4つある
私はタイポグラフィを、4つの役割で考えています。
見つけてもらう → 読んでもらう → 理解してもらう → 覚えてもらう
この4段階は、そのまま読者の認知フェーズです。
でも多くの記事は、「読んでもらう」だけを改善しようとしてます。
なので「行間は何pxが正解ですか?」「1行は何文字が理想ですか?」という疑問が生まれるんです。
でも、それは設計図ではなく寸法表を眺めているようなもの。
大切なのは数値ではありません。
今の読者は、どのフェーズにいるのか?
そこが設計の出発点です。
以下の3つの例は、同じ構造を持っています。
1つのフェーズのルールを、別のフェーズに適用したとき、何が起きるか?
01. 行間の話:「読む」と「見つける」は別設計
行間の常識は、「広い方が読みやすい」。
長文の記事では確かにその通りです。
ところが、SNSでは逆のことが起きます。
1文ごとに大きく間が空いた投稿は、一見読みやすそうでいてテンポが失われます。1画面の中で文脈が切れ、「別々の話」として読まれてしまうことも。
なぜそうなるのでしょうか?
SNSの投稿に求められる役割は、「読んでもらう」ではなく「見つけてもらう」です。スクロールの流れの中で目を止めさせ、続きへの勢いを作ること。その目的が先です。
フェーズが違えば、最適な設計は逆転します。
「広い方が良い」は、フェーズが特定されて初めて意味を持つ仕様です。
02. 読みにくさの話:「気付く」と「理解する」は別設計
広告やポスターには、あえて「読みにくい」デザインがあります。
文字が大きかったり、小さかったり。
余白が極端に広い。
レイアウトも不自然。
これは失敗ではありません。
目的が違うからです。
広告の仕事は、まず立ち止まらせること。
記事の仕事は、最後まで読ませること。
広告は「見つけてもらう」を設計し、記事は「理解してもらう」を設計します。
求められるフェーズが違えば、「正解」が変わるのは当然のこと。
読みにくさが設計の意図であれば、それは正解となります。
「読みやすさ」は万能ではありません。
目的のないタイポグラフィには、正解もないんです。
03. 強調の話:太字だらけの記事は、不安だらけの記事
太字や色を使えば、重要な部分は目立ちます。
ですが、使いすぎると全部が重要になり、何も残りません。
ここで1つ、観察してみましょう。
太字が多い記事は「読んでもらえるか不安な書き手」の状態が、そのままページに載っている状態です。強調を増やすほど、書き手の不安があふれてしまう。
読者はそれを、論理より先に感じ取ります。
新聞や文芸作品に太字がほとんどないのは、簡素なのではありません。
媒体や書き手が読者を信頼しているから。
読者自身が見つけた言葉は、与えられた言葉よりも記憶に残ります。
「覚えてもらう」フェーズを設計するなら、何かを足すより引く方が機能することは良くあることです。
正解はない、あるのは目的
「行間は何pxですか?」
この質問を受けると、私は少し考えます。
設計で本当に考えるべきなのは、数字ではないからです。
読む気がない人なのか?
興味を持ち始めた人なのか?
比較検討している人なのか?
読者の状態が変われば、最適な設計も変わります。
ここで言うタイポグラフィは、文字を整える技術ではありません。
読者の認知を整える技術です。
なので、正解は1つではありません。
あるのは「どの状態の読者を、どこへ導くのか?」という目的だけです。
デザインとは、見た目を整えることではありません。
相手が考えなくて済む体験を設計することです。
タイポグラフィは、その思想が最もよく表れるポイントなんです。
※不定期としてますが、現在毎週火・金曜 6時配信と仮設定してます。



