How to create an Outline #5
仕事がうまくいっている。
評価されている。
依頼が来る。
なのに、どこかで「これは自分の仕事か?」という感覚が浮かんでしまう。
成功と迷子が、同時に存在する。
その奇妙な状況を、この記事では観察します。
褒められた方向への引力
「夜の仕事」のグラフィックを請け負っていた時期があります。
価格を抑え、スピードで応える。
その姿勢が評価され、どんどん仕事が増える。
「またお願いしたい」「ウチもお願いします」という声がしばらく続きました。
褒められることは情報です。
「この方向が正しい」という外部からのシグナル。
シグナルが強いほど、次も同じ方向に進みます。
また評価される。
さらに深く進む。
この繰り返しは合理的に見えます。
気づかないうちに「褒められるために作る」が、「作りたいから作る」をゆっくり上書きしていきました。
鏡が現れた日
その仕事を続けていたある日、知人から別の依頼が来ました。
内容は子育て相談所のWebサイトやパンフレットなど。
規模も予算も、夜の仕事関連とは全く違います。
そしてしばらく手を動かしていると、何かが戻ってきた感覚がありました。
言葉にするのは難しいですが、クリアに「この人に届く」という確信。
夜の仕事とは違う、先が見える感覚でしょうか。
私が役に立ちたいと思える人へ向けた感情が戻った時、初めて気づいたんです。
夜の仕事関連を手掛けている間、その感覚がずっと薄れていたことに。
迷子は、別の場所に立ったときに初めて発覚します。
進んでいる間は見えないもの。
褒められている最中は特に見えません。
壁が現れた日
前職の制作会社で、Webデザインの「かっこいい」が評価されました。
求められた。
その方向に応え続けた。
クライアントの反応は良かった。
社内でも認めらるようになった。
そんなある日、とある案件で、実際のユーザーの反応の低さを目の当たりにしました。
その数字を見た時、「かっこいい」という言葉の意味が一瞬分からなくなりました。
評価されてきたものは何だったのか?
ここから自分の制作の方向性について考え出します。
褒められた方向が、正しい方向とは限りません。
そもそも何が正しいなんて、境界は自分の中にしかありません。
その事実を数字が無常にも示したんです。
2つの迷子は同じ構造をしている
夜の仕事と制作会社の話。
気づき方は違います。
一方は、別の仕事が鏡になった。
もう一方は、結果という壁にぶつかった。
でも構造は同じ。
外側の評価を地図にして歩き続けたとき、ある日「自分はどこに行きたかった?」という疑問に答えられなくなっていました。
地図はある。
実績もある。
依頼も来る。
それでも迷子になりました。
コンパスは、強い磁石の近くでは正確に動きません。
引力が強いほど針は狂ってしまいます。
そして狂っていることにも気づかなくなっていくんです。
迷子の正体は、道を間違えたことではありません。
自分がどこに向かいたかったのかを参照しなくなったことです。
針が戻る瞬間がある
磁石から離れたとき、コンパスは静かに本来の方向を指し始めます。
鏡が現れたとき。
壁にぶつかったとき。
あるいは、褒められた仕事とは全く違う仕事を久しぶりに手がけたとき。
その時、針がどこを指していたかが遡って見えてきます。
ずっとそこを指したかったのか?
それとも磁石に引き寄せられていただけだったのか?
その答えは、針が戻った瞬間にしか分からないんです。
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